毎月のガス代や電気代の請求書を見て、「もう少し安くならないか」と感じていませんか。実は、専門的な知識や特別な道具がなくても、今日からすぐに実践できる簡単な節約術があります。それが「給湯器の温度設定の見直し」です。
多くの方が一度設定したきり、ほとんど触ることのない給湯器のリモコン。しかし、この温度設定にこそ、無駄なエネルギー消費を抑え、家計を楽にする大きなヒントが隠されています。
この記事では、家計のプロが「給湯温度」に焦点を当て、なぜ温度設定が節約に繋がるのかという仕組みから、場所別・季節別に最適な温度、そして注意点までを徹底解説します。
なぜ給湯温度の調整が節約につながるのか?
節約の仕組みは非常にシンプルです。「設定温度を高くするほど、水を温めるためにより多くのガスや電気を消費する」からです。
特にやってしまいがちなのが、「熱いお湯を、水で薄めて使う」という行為です。例えば、給湯器の設定を60℃にして、お風呂の蛇口で水を混ぜて42℃の適温にする場合を考えてみましょう。この時、42℃のお湯を60℃まで加熱した分のエネルギー(ガス・電気)は、完全に無駄になってしまっています。
節約の基本は、「使う場所」で「使いたい温度」に、できるだけ近い温度で給湯器を設定すること。この「ジャストな温度設定」を心がけるだけで、無駄なエネルギー消費を根本から断つことができるのです。
【場所別】これが最適!むだなく快適な給湯温度
家庭内で主にお湯を使う「キッチン」「お風呂・シャワー」の2つの場所について、最適な設定温度を見ていきましょう。
使用場所 | 推奨設定温度 | 理由・節約ポイント |
---|---|---|
キッチン(食器洗い) | 38℃~40℃ | 油汚れが溶け始めるのは40℃前後から。この温度なら、洗剤の力を借りれば十分汚れは落ちます。これ以上高く設定しても、効果はあまり変わらずガス代の無駄に。手荒れの防止にも繋がります。 |
お風呂・シャワー | 40℃~42℃ | 多くの人が快適と感じる温度帯。この温度に設定すれば、蛇口で水を混ぜる必要がほとんどなくなり、エネルギーのロスを最小限に抑えられます。 |
お風呂(お湯張り) | 入りたい温度に直接設定(例: 42℃) | 浴槽に入りたい温度で直接お湯を張ることで、「追い焚き」や「足し湯」の回数が激減します。追い焚き1回でかかるガス代は決して安くありません。これを防ぐことが大きな節約に繋がります。 |
これまでの設定が45℃や50℃だった方は、推奨温度に見直すだけで、その効果を実感できるはずです。
【季節別】年2回の見直しで、さらに節約効果アップ!
最適な給湯温度は、季節によっても微妙に変化します。その理由は、給湯器に供給される「水道水の温度」が季節で変わるからです。
夏(6月~9月頃):設定温度を1~2℃下げる
夏場は水道水の温度が高いため、冬場と同じ設定温度でもお湯を沸かすエネルギーは少なくて済みます。さらに、気温も高いため、体感としてそれほど熱いお湯を必要としません。
- お風呂・シャワーの設定を42℃ → 40℃に下げる
これだけでも、ガスや電気の消費量を抑えることができます。たった1〜2℃の違いと侮ってはいけません。
冬(12月~2月頃):元の温度に戻す。むやみに上げすぎない
冬場は水道水の温度がぐっと下がるため、お湯を沸かすのにより多くのエネルギーが必要になります。夏に下げていた設定温度を、元の快適な温度(例:42℃)に戻しましょう。
ただし、「寒いから」といって45℃や50℃といった過度に高い温度に設定するのは禁物です。前述の通り、蛇口で水と混ぜて使うことになり、かえってエネルギーの無駄遣いになってしまいます。
給湯温度を調整する際の注意点
手軽で効果の高い給湯温度の節約術ですが、いくつか知っておくべき注意点もあります。
1. サーモスタット混合水栓の場合
シャワーなどで使われる、お湯と水を混ぜて設定した温度のお湯を出す「サーモスタット混合水栓」の場合、給湯器自体の設定温度が低すぎると(例:給湯器40℃、水栓40℃)、うまく温度調整が機能せず、お湯の量が少なくなったり、温度が不安定になったりすることがあります。水栓メーカーは、給湯器の設定温度を50℃~60℃にすることを推奨している場合が多いです。しかし、これはあくまで機器の安定動作のための推奨であり、節約の観点からは、やはり「使う温度」に近づけるのが基本です。まずは42℃前後で試してみて、問題がなければその温度で使うのが良いでしょう。
2. エコキュートなど貯湯式の給湯器の場合
夜間の安い電力でお湯を沸かし、タンクに貯めておく「エコキュート」などの貯湯式給湯器は、仕組みが異なります。これらは衛生上の観点(レジオネラ菌対策など)から、タンク内のお湯を65℃~90℃という高温で沸き上げています。
そのため、節約のポイントはタンクの「沸き上げ温度」ではなく、リモコンで設定する「給湯温度」になります。考え方はガス給湯器と同じで、「使う場所で使う温度に設定する」のが基本です。
3. 古い配管への配慮
非常に古い住宅などで配管の衛生状態が気になる場合は、専門家に相談することもご検討ください。ただし、一般的な家庭で毎日お湯を使っている場合、40℃程度の温度設定で衛生上の問題が起きることは稀です。
まとめ:給湯温度の見直しは、意識不要の「自動節約術」
給湯温度の節約は、一度設定してしまえば、あとは何もしなくても自動的に節約効果が続く、非常に効率的な方法です。日々の我慢や努力は一切必要ありません。
「うちはずっと45℃設定だったかも…」そう思った方は、ぜひ今夜、ご自宅の給湯器のリモコンを確認してみてください。場所別・季節別に最適な温度に設定する、そのわずかな手間で、あなたの家の光熱費は着実に、そして確実に削減されていくはずです。
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